boyaki

下書きにしてたりしましたが戻しました

倒れるまで働く

この間倒れた

 

仕事中に取引先で倒れてしまった。

年明けくらいから胃が毎日痛くて、でも我慢できるなって放っておいたらこの日は違った。いつもの痛さだからそのうち良くなるだろうって思ったのに全然良くならなかった。そしてよりにもよってお客さんの前で動けなくなってしまった。

 

そこのおじさんはいい人で、駅まで送ってくれると申し出てくれた。

体調不良は私の責任だし自力で会社まで戻りたかったけど、その会社は最寄り駅からバスで20分そこから徒歩20分の僻地にあり、途中で気を失う可能性を感じるほど胃が痛かったので送ってもらうことにした。

 

そこのおじさんはいい人で、途中ドラッグストアで胃薬を買ってくれた。

胃が痛くてのたうち回ったことは前にもあったから、これ以上痛くならずに済む過ごし方は心得ていた。胃薬を飲んで、深呼吸して、じっとする。一度発作のような猛烈な痛みが出たらおしまいだから、それが出ないようにじっと過ごす。痛みをとりあえずやり過ごすのだ。

 

そこのおじさんはいい人で、駅までじゃなく会社まで送ってくれると申し出てくれた。

痛みがましていよいよ動けなくなっていた私は送ってもらうことにした。

 

そこのおじさんはいい人で、高速道路を使ってまで早く送り届けようとしてくれた。

そして私はうめきながらのたうち回りたかったので、会社ではなく家に送ってもらうことにした。家の方が近かったし、こういう痛みのときはとにかくのたうち回ってトイレとベッドを往復するしかないと知っていたからだ。さすがに会社じゃのたうち回れない。社に戻ってもすぐ家へ帰ることになるだろう。

会社と家もまた微妙に遠いしその間に倒れるのも怖かった。無様な姿を公衆の面前に晒したくないし一刻も早く誰もいないところで倒れたかった。

 

そこのおじさんはいい人なんだと思う。薬を買ってくれて、高速を使って家まで送り届けてくれた。いい人なんだろう。

 

でも、車中で身体を触られたことがどうしても忘れられない。

別に胸をもまれたりした訳じゃない。手を握られて、顔をなでられただけだ。

私は何度も、その行動を正当化しようと考えた。

手を握られたのはペットボトルを握らせるため

手を握られたのは痛みに苦しむわたしを励ますため

顔をなでられたのは熱を測るため

もしくは顔にごみが付いていたのか

でも無理だった。どうしても理解できない。触る正当性が分からない。

 

何度もいい人だと思い込もうとした。その人がいなかったら私はきっと僻地の道で倒れていた。誰にも見つからなかったかもしれない、死んでたかもしれない、もっと悪い人に捕まってたかもしれない。

 元々いろいろ思うところがあった人だからなるべく関わりたくなかったけどどうしようもなかったのだ。身体が痛くてたまらなかった。耐えられなかった。だから触られたのもどうしようもなかったのだ。自分の体調を管理できなかった自分の責任だ。手を握られたくらいで済んで良かった。

 

私は倒れるか、もしくは次が決まったら今の仕事を辞めようと決めていたから身体の不調を放ってきた。

 

私の計画では上司の前で気を失うようにして痛みなく倒れるはずだった。

でも現実は脂汗をかくほど身体が痛かったし、倒れた場所も上司の前じゃなかった。報告はしたけど次の日休まず出社したから上司は私の体調不良をなかったことのようにした。何もかも私の計画とは違った。上司の前で痛みなく気を失って病院に運ばれて即日会社を辞める予定だったのにぜんぜん上手くいかなかった。

 

割愛するが私の会社は辞めるのが本当に大変なのだ。

労基法違反レベルで辞めさせてくれない。それから逃げたかったし、だから倒れば簡単に辞めれると思っていた。

それに会社は嫌いだったけど仕事内容は嫌じゃなかったし、同期も先輩も後輩もお客さんも大好きだった。だからどんなに会社が無理でもどこで辞めればいいのか分からなかった。ただもう本当に会社が無理だったし、自発的要因で辞められないなら倒れるしかないと思っていた。

 

でも倒れるとかそういうのは本当に良くないと今回分かった。

ちゃんと自分で自分を管理して、自分の意思で辞めなきゃいけない。さもないと想像もしてなかったような恐ろしいことが起きるのだ。世の中の人が皆いい人とは限らない。

あとは普通に迷惑。冷静に考えたら倒れた人間の介抱とかしてられないですよね。おかしいとおもったら初期症状で病院に行っておかないといけないなと思った。

 

辛くて涙が出たのは次の日の朝だけだったけど、でもあの気持ち悪い触られた感触はまだ夢に出てくる。

 

送ってくれたおじさんは父親の一歳年下だった。